
地域のハブへと進化するミュージアム、コミュニティアーカイブの役割を担う
蝦名未来
北海道大学総合博物館の「ミュージアムショップぽとろ」は、北海道大学総合博物館の展示や北海道に関連する商品を取り揃え、来館者が博物館の余韻を楽しめる場として運営されている。店長の野村氏は、大学と地域をつなぐ役割を果たすことを意識し、アイヌ文化に関する商品や北海道ゆかりの作家の作品なども取り扱っている。
「ぽとろ」では、博物館の教授や研究員、学生と連携した商品開発にも力を入れており、博物館学の授業を通じた学生企画の商品や、企画展に関連したコラボ商品が多数並ぶ。毎年開催される「トガリネズミ展」では、系統樹マンダラやポストカード、缶バッジなどを共同制作し、来館者に人気の商品となっている。
大学博物館のショップとしての特徴は、研究成果を活かした商品展開にある。研究資料の販売や、学術的な背景を持つ商品を揃えることで、一般的なミュージアムショップとは異なる魅力を提供している。一方で、さらなるコラボ商品の開発や、歴史ある博物館の建物を活用した商品化が今後の課題となっている。例えば、博物館内の古い家具や建築の要素を活かした商品作りに取り組みたいという構想がある。
ショップ利用者の傾向として、国内客は毎年訪れるリピーターや、開館直後の早い時間から訪れる熱心な来館者が多い。一方、海外客は「ここでしか買えない商品」を求めることが多いという。また、オープンキャンパスの時期には、高校生が北大関連のトートバッグなどを購入し、大学への憧れを形にしている。
今後の展望としては、アイヌ工芸品の実演販売の実現を目指し、作り手の技を間近で見てもらう機会を増やしたいと考えている。接客においては、一対一の丁寧な対応を心掛け、店頭にしかない商品の遠方販売にも柔軟に対応するといった、小規模ショップならではの細やかなサービスを提供している。「ぽとろ」は、来館者との対話を大切にしながら、博物館という場から大学と多様な来館者をつなぐ入り口としての役割を心掛けている。
北海道大学総合博物館内にある「ミュージアムカフェぽらす」は、2016年のオープンから7年を迎え、北海道産の食材や北大に関連する食材を活かした「体に優しい」料理を提供することをコンセプトに運営されている。料理の提供だけでなく、北大生のアルバイトを積極的に受け入れ、社会経験を積む場としての役割も果たしている。
特に人気のメニューはソフトクリームで、その原料となる牧場を訪れる研修も実施している。生産現場を知ることで、販売とのつながりを体感できる貴重な機会となっている。また、博物館の特別展とコラボしたメニューも話題を集めている。例えば、地球内部を再現した「地層パフェ」や、シマエナガを模したソフトクリーム、縄文土器を再現した器で提供する飲み物などが来館者の注目を浴びてきた。
カフェの利用者は、学生や教職員に加え、国内外の観光客も多い。しかし、最近は北海道産の食材を使用することで価格が高くなり、日常的な利用がだんだん難しくなるという課題もある。今後は、さらに学生や職員にも気軽に利用してもらえるカフェを目指していきたいという。設備面では、開店当初はガスが使用できず、調理機器の制限に苦労したが、現在は別のキッチンで仕込みを行い対応している。今後は、博物館のスペースを活用した学生の発表イベントの企画や、学会・研究室の懇親会向けの食事提供の拡充を検討している。また、北海道大学で研究目的で生産される食材を活用したメニュー開発や食事会の実施にも意欲を見せている。
北大の他部局や企業からの注文も増えており、広がりを見せる「ぽらす」。今後も、「また来たい」と思ってもらえる接客を心掛け、訪れる人々との対話を大切にしていく。
(執筆:卓彦伶)
取材日:ミュージアムショップ ぽとろ 2023年8月15日
ミュージアムカフェ ぽらす 2023年8月20日